新型コロナ:ワクチンの効果で一番重要なのは致死率の低下で、だから高齢者などへの接種を急いでいる

新型コロナウイルスワクチンの接種が進んでいます。私は、首相が7月末に完了という目標を出したときに、「6月末ごろに100万回/日を達成、7月末に80%の高齢者に1次接種完了」と予想していましたが、それよりもはるかに速いペースとなっています。ワクチン接種に関係する人々全員の努力のおかげだと思います。

一方、これに関するマスコミの報道がまちがいやミスリードだらけで非常に残念な状態です。ワクチンの副反応疑いに関しても供給に関しても接種ペースに関しても基本的な情報を書かずに不安をあおるだけの報道が連日大量に行われています。特に副反応疑いに関する報道はひどいもので、高齢者がワクチン接種を止める原因となっていて、どうにかならないものかと思っています。

今日書きたいのはワクチンの効果です。このところの報道では、集団免疫の獲得がいつになるかということに重点を置いたものがほとんどです。しかし、現時点で重要なのは致死率の低下です。だからこそ、高齢者への接種を早期に完了させる必要があります。そのことを書きたいと思います。

 

ワクチンの効果には次の3つがあります。

  • 致死率の低下
  • 重症化率の低下
  • 感染率の低下

そして、私の考えでは重要度もこの順番です。

盛んに報道されている集団免疫は、最後の感染率の低下によって獲得できるとされているもので、これによって感染者数が減少します。感染者数が減れば、当然死者数も入院数も減りますので、一見これが重要に見えます。しかし、私のラフな計算では、集団免疫を獲得したとしても、月に数万人の感染者発生は避けられません。それ以上に、変異が大きいことを考えると、集団免疫が獲得できるかどうかが怪しいように思います。実際、ウイルスの変異が大きいインフルエンザでは毎年、月に数百万人の感染者が発生します(2019-2020年シーズンと2020-2021シーズンは例外的にすくなっかったですが)。

一方、致死率が低下して死者数が激減すれば、インフルエンザ並みのリスクになります。そうすると感染症としては特別のものでなくなり普通のものになります。重症化率が低下すれば、入院する人が減るので医療資源への圧力が少なくなります。

なので、集団免疫の獲得が不明確な現時点では、まず死者数と入院数を激減させることが重要ですし、これが達成されば通常に近い社会活動が再開できると思っています。

 

そもそもの話が、死者も重症患者も高齢者と基礎疾患を持っている人で多く発生しています。死者を年齢で分類すると、80歳以上が64%、70代が24%、60代が7.5%、50代が2.5%、50歳未満が1%です。70歳以上で90%を占めています。高齢者に相当する65歳以上だとおそらく95%ぐらいで、非高齢者は5%ぐらいです。有基礎疾患者の割合についてはデータを持っていないのですが、各自治体の死亡報告を見ると60歳未満の半分以上は有基礎疾患者であるような印象があります。なので、ここでは簡単のために5%の非高齢者の死亡のうち、40%が有基礎疾患者だとします。

そうすると、新型コロナによる死亡者の95%が高齢者であり、高齢者+有基礎疾患者では97%にもなります。

 

ワクチンは複数の会社が製造しています。それぞれのワクチンで効果の検証が行われており、日本で使用されている欧米系の会社のものは90-95%の効果があると報告されています。実際、ワクチン接種が進んだ国では死者数が激減している国もあります(すべての国ではありません)。

仮に、ワクチンによって致死率が95%低下するとすると、死者数は今の8%に低下することになります([1-0.95]×0.97+0.03=0.0785)。効果が80%としても、死者数は22%に激減します。

 

新型コロナ対応では死者を激減させることが一番大事です。だからこそ、高齢者と有基礎疾患者へのワクチン接種を急ぐべきなのです。もちろん、このことは多くの人が一般論として知っているでしょう。しかし、上のように具体的に数字を計算して、その重要度を認識している人は少ないように思います。この記事で、是非その重要性を認識していただければと思います。