新型肺炎:データ分析では思い込みを排せ

データ分析では思い込みを排除するということは当たり前のことなのですが、いろんな記事や評論を読むと、この当たり前のことができていません。

 

「勝ちに不思議の勝ちあり 負けに不思議の負けなし」

 

平戸藩藩主松浦静山の言葉です。野球の野村監督が好んだ言葉です。

いくつか前の記事に書いたように感染抑制に成功した国が出ております。
日本も感染が抑制できています。また、死亡率も世界の中では低い方であり、まあ勝った国と言って良いでしょう。 

この事実を奇妙と思い、その要因を探ろうとする人たちがたくさんいます。奇妙ですから、まさに「不思議の勝ち」ですね。
奇妙と思うのは、日本の対策が不十分だという思い込みがあるからです。対策、特にPCR検査が不十分なのに感染が押さえ込めている、これは不思議だ、なぜだ、ということですね。

 

日本の成功を不思議の勝ちと思うこと自体は別に悪くは無いと思います。問題は、それを日本だけに適用してしまうことです。そのような思い込みに基づく自説を持ってしまうと、自説に都合の良いデータとパラメータだけを選んで分析してしまう恐れがあります。
「不思議の勝ち」「奇妙な成功」という見方はすべての国・地域に適用して、できるだけ思い込みを排除して分析すべきです。

 

もう一つの「不思議の負けなし」も重要だと思っています。
成功したと見なせる国・地域でも、それぞれに負けがあります。勝ちの要因に比べれば、負けの要因の分析は容易なはずです。
日本で言えば、

  • 2月末に自粛と休校の要請に追い込まれたこと、
  • 3月下旬から自粛の呼びかけを強化せざるを得ず、最終的に緊急事態宣言を出したこと、
  • 東京での4月の陽性率が数週間高い状態だったこと
  • 5月に緊急事態宣言を延長したこと

などが挙げられます。韓国では、

  • 2月中旬の爆発的感染拡大を防げなかったこと、
  • 厳しい行動抑制を課したこと、
  • プライバシーを侵害する感染追跡をせざるを得なかったこと

などがあるでしょう。ベトナムは人口の多い国の中で最も成功した国だと思いますが、それでも負けがあります。

  • 2月に休校したこと
  • 3月には国中の移動規制を発したこと

などがあると思います。もちろん、これは必要な措置だったとも見なせますが、強い規制はない方が良いわけで、その意味で負けだと見なせると思います。
その他の国にも、それぞれに負けがあります。
勝ちの要因分析に比べれば、負けの要因分析は容易なはずです。したがって、勝ちの要因分析よりも負けの要因分析を先行させるべきだと思います。負けの要因分析から、逆に勝ちの要因が浮かび上がってくる可能性も十分にあります。

ただ、ベトナムは人口比の感染者数が小さすぎるので要因分析が難しいかもしれません。