新型コロナ:供給不足が叫ばれているのでワクチン残量を見通してみる
政府から自治体への供給が不足しているという報道が相次いでいます。2つ前の記事に書いたように全国のレベルでは不足していません。
そんな中、1つ前の記事に書いたようにやはり7月1日に第10クールの配分が発表されました。元々の予定では「8000箱+調整分」だったのですが、その調整分2600箱は丸々大規模接種用として自治体に配分されることになりました。また、残念ながら遅れていたのは前向きな理由ではなく、単に苦慮を重ねていたために発表が遅れたように見えます。
ともあれ、これで7月末までのファイザー製ワクチンの供給量が決定しました。そこで、今後の使用量を推定して、7月最終週までの一般接種用ファイザー製ワクチンの残量を試算してみました。結論を書くと、8/1の段階で約2300-2700万回分の残量があると思われます。お盆を含む5日間は休むと仮定すると、92-108万回/日のペースが8月下旬まで維持できる計算になります。会場への配送や廃棄などの余裕を持たせる必要があるので、実際にはそれより1-2割少ない値になるでしょうけど。
また、7/1時点での報告数をもとに各都道府県の使用率も計算しました。上位5県は、岐阜45.4%、山形44%、佐賀42.8%、宮崎42.3%、石川41.3%でした。下位5県は、北海道28.8%、大阪29.8%、沖縄30.4%、栃木30.9%、茨城31.6%でした。全国での一般接種用ファイザーワクチンの使用率は35%です。ただし、報告遅れがあるので、実際には37-40%だと思われます。
以下、詳細なデータを載せます。
まず、一般接種用ファイザー製ワクチンの残量を試算した試算結果です。
日付 | 供給(箱) | 供給(回) | 使用(回) | 残り(回) |
2021/4/5 | 100 | 97,500 | 0 | 97,500 |
2021/4/12 | 500 | 487,500 | 39,166 | 545,834 |
2021/4/19 | 500 | 487,500 | 203,386 | 829,948 |
2021/4/26 | 1,741 | 1,697,475 | 251,935 | 2,275,488 |
2021/5/3 | 4,000 | 3,900,000 | 243,414 | 5,932,074 |
2021/5/10 | 8,000 | 9,360,000 | 1,077,085 | 14,214,989 |
2021/5/17 | 8,000 | 9,360,000 | 2,063,307 | 21,511,682 |
2021/5/24 | 8,000 | 9,360,000 | 3,481,793 | 27,389,889 |
2021/5/31 | 8,000 | 9,360,000 | 4900000 | 31849889 |
2021/6/7 | 6,750 | 7,897,500 | 6090000 | 33657389 |
2021/6/14 | 6,750 | 7,897,500 | 8050000 | 33504889 |
2021/6/21 | 8,000 | 9,360,000 | 8050000 | 34814889 |
2021/6/28 | 8,000 | 9,360,000 | 8750000 | 35424889 |
2021/7/5 | 5,500 | 6,435,000 | 8750000 | 33109889 |
2021/7/12 | 5,500 | 6,435,000 | 8050000 | 31494889 |
2021/7/19 | 4,000 | 4,680,000 | 8050000 | 28124889 |
2021/7/26 | 4,000 | 4,680,000 | 8050000 | 24754889 |
合計 | 87,341 | 100,854,975 | 76100086 | 24754889 |
週単位での集計です。桁区切り付きの数字は確定したものです。桁区切りがなく斜体の数字は私独自の推定値です。推定は数字をじっくり見た上での直感で行いました。直。ただ、6/14からは医療関係者への接種に一般用のワクチンが使われていますので、使用量の推定ではその点を考慮してあります。また、7/11からはペースを落とすと仮定しています。それと、第10クール(7/19の週)に大規模接種用として配分される2600箱は計算に入れてません。
簡単にまとめると、8/1までに政府から各都道府県に1億回分強が供給され、そのうち約7600万回分が接種に使われ、約2500万回分が残ると思われます。(一般とは別に医療関係者用として約1000万回分が供給され使用されています。)
また、ファイザーからは9月末までに5000万回の追加の納入があります。複数回に分けて納入されるでしょうから、初回納入は8月中旬になるんじゃないかと思います。希望的観測ですけど。これの納入予定が発表されれば、今の「供給不足」騒動は終わりです。さらに、10月以降にはファイザーから約3400万回分が、モデルナから500万回分が納入されます。これらが納入されると、日本人の接種対象者分の全量が輸入されることになります。
1700万人分が下半期に納入されるはずです。また、約2500万人分
次に、都道府県別の配分数と、7/1の時点での接種報告数、およびそれらの比である使用率を示します。
人口(千人) | 高齢者人口(千人) | 供給数(回) | 接種回数(7/1) | 使用率 | 非高齢者分比率 | |
全国 | 126,167 | 35,461 | 100,854,975 | 35,366,445 | 35.0 | 29.7 |
北海道 | 5,250 | 1,656 | 4,338,360 | 1,252,613 | 28.8 | 23.7 |
青森 | 1,246 | 417 | 1,187,355 | 385,205 | 32.4 | 29.8 |
岩手 | 1,227 | 405 | 1,062,555 | 348,270 | 32.7 | 23.8 |
宮城 | 2,306 | 635 | 1,808,235 | 628,750 | 34.7 | 29.8 |
秋田 | 966 | 360 | 927,615 | 318,028 | 34.2 | 22.4 |
山形 | 1,078 | 358 | 1,043,835 | 459,416 | 44.0 | 31.5 |
福島 | 1,846 | 576 | 1,719,510 | 643,286 | 37.4 | 33.1 |
茨城 | 2,860 | 839 | 2,295,345 | 725,737 | 31.6 | 26.9 |
栃木 | 1,934 | 555 | 1,499,160 | 463,304 | 30.9 | 26 |
群馬 | 1,942 | 576 | 1,581,255 | 607,829 | 38.4 | 27.2 |
埼玉 | 7,350 | 1,935 | 5,382,390 | 1,776,697 | 33.0 | 28.1 |
千葉 | 6,259 | 1,702 | 4,629,495 | 1,602,046 | 34.6 | 26.5 |
東京 | 13,921 | 3,122 | 10,157,160 | 3,227,370 | 31.7 | 38.6 |
神奈川 | 9,198 | 2,304 | 6,083,415 | 2,205,563 | 36.2 | 24.3 |
新潟 | 2,223 | 715 | 1,952,535 | 749,135 | 38.3 | 26.8 |
富山 | 1,044 | 334 | 864,240 | 355,005 | 41.0 | 22.8 |
石川 | 1,138 | 333 | 975,780 | 403,748 | 41.3 | 31.8 |
福井 | 768 | 232 | 651,300 | 267,282 | 41.0 | 28.8 |
山梨 | 811 | 249 | 680,940 | 250,388 | 36.7 | 26.9 |
長野 | 2,049 | 650 | 1,834,950 | 678,367 | 36.9 | 29.2 |
岐阜 | 1,987 | 600 | 1,628,445 | 740,680 | 45.4 | 26.4 |
静岡 | 3,644 | 1,087 | 2,896,530 | 924,359 | 31.9 | 25 |
愛知 | 7,552 | 1,873 | 5,748,600 | 2,077,672 | 36.1 | 34.9 |
三重 | 1,781 | 529 | 1,480,635 | 577,048 | 38.9 | 28.6 |
滋賀 | 1,414 | 365 | 1,087,320 | 362,313 | 33.3 | 32.9 |
京都 | 2,583 | 737 | 2,040,285 | 753,389 | 36.9 | 27.8 |
大阪 | 8,809 | 2,378 | 6,822,855 | 2,037,434 | 29.8 | 30.3 |
兵庫 | 5,466 | 1,566 | 4,379,310 | 1,572,868 | 35.9 | 28.5 |
奈良 | 1,330 | 416 | 1,141,530 | 423,889 | 37.1 | 27.2 |
和歌山 | 925 | 308 | 1,006,785 | 388,007 | 38.5 | 38.9 |
鳥取 | 556 | 176 | 526,500 | 205,615 | 39.0 | 33.2 |
島根 | 674 | 229 | 630,630 | 233,893 | 37.0 | 27.4 |
岡山 | 1,890 | 566 | 1,663,350 | 653,268 | 39.2 | 32 |
広島 | 2,804 | 816 | 2,139,150 | 751,660 | 35.1 | 23.8 |
山口 | 1,358 | 464 | 1,537,575 | 569,637 | 37.0 | 39.7 |
徳島 | 728 | 242 | 685,815 | 266,210 | 38.8 | 29.5 |
香川 | 956 | 301 | 833,430 | 272,536 | 32.7 | 27.8 |
愛媛 | 1,339 | 441 | 1,216,410 | 407,985 | 33.5 | 27.5 |
高知 | 698 | 245 | 719,355 | 286,215 | 39.7 | 31.9 |
福岡 | 5,104 | 1,396 | 4,022,070 | 1,511,146 | 37.5 | 30.6 |
佐賀 | 815 | 244 | 781,365 | 334,560 | 42.8 | 37.6 |
長崎 | 1,327 | 433 | 1,246,830 | 434,325 | 34.8 | 30.6 |
熊本 | 1,748 | 542 | 1,515,735 | 611,371 | 40.3 | 28.5 |
大分 | 1,135 | 372 | 996,255 | 395,162 | 39.6 | 25.4 |
宮崎 | 1,073 | 347 | 939,705 | 398,082 | 42.3 | 26.2 |
鹿児島 | 1,602 | 512 | 1,437,540 | 507,683 | 35.3 | 28.8 |
沖縄 | 1,453 | 323 | 1,055,535 | 321,399 | 30.4 | 38.8 |
接種回数は報告数です。報告遅れがあるので、実際には200-500万回多いと思われます。(1-高齢者人口×2/供給数)で供給されたワクチンのうち、高齢者以外に使える分の比率です。これが高いほど非高齢者への接種に余裕があることを意味します。
全国での一般接種用ファイザーワクチンの使用率は35%です。報告遅れを考慮すると、37-40%だと思われます。
上位5県は、岐阜45.4%、山形44%、佐賀42.8%、宮崎42.3%、石川41.3%でした。下位5県は、北海道28.8%、大阪29.8%、沖縄30.4%、栃木30.9%、茨城31.6%でした。
一般に人口の多い県ほど使用率が低くなります。その点を考慮すると、神奈川、愛知、福岡も使用率が高いと言えます。逆に、青森、岩手、秋田、滋賀、香川、愛媛は低いと言えます。
以上のデータからは、いずれの県も十分に在庫があるといえます。少なくとも高齢者分と有基礎疾患者分には十分です。市町村や病院のレベルで不足するところが出るでしょうけど、各都道府県で調整すればよい話です。とにかく、高リスク群への接種をできるだけ早く行って死者の発生を少なくすることが重要です。その後はペースを落として、11月までに希望する全住民への接種を目指すという方針で良いと思います。
全国での接種ペースは、おそらく8月下旬まで90万回/日を維持できます。ただしこれは純粋に計算上のもので、実際には各市町村内で病院や接種会場への配送を円滑に行うために余裕が必要ですし、廃棄が出るでしょうからその分も余裕が必要です。その余裕分を2割程度取ったとしても8月下旬まで70-90万回/日は可能だと思います。100万回/日を下回りますが、もともと100万回/日を長く続けるのは無理があるので、高リスク群がおおむね完了するであろう7月中旬もしくは下旬からペースを下げるのは理に適っています。医療資源にも余裕が出ます。なので、夏休みとお盆休みで人流が増えて感染が増えたとしても対応に余力を持たせることができます。
とはいえ、いくつかの県では不安があるのは間違いありません。特に、使用率が高くて非高齢者分比率が低いところは、不足する可能性が高いと思います。岐阜、富山、広島、宮崎は、その条件に合致するため、政府が何らかの措置を取った方が良いと思われます。