井上伸解釈は話半分で読むのがちょうどよい

井上伸という方がいます。名前は「しん」のようです。同じ漢字で「のぼる」と読む弁護士の方がいるのでお間違えなきよう。

その井上伸(しん)さんは、国家公務員一般労働組合執行委員です。また、共産党支持者です。そのためでしょう、弱者に常にやさしい視線を向けておられます。また、資本主義には反感を持っているようで、特に小泉元首相や安倍首相、橋下徹大阪市長など新自由主義だと井上伸さんが思っている人への嫌悪はかなり強いように思います。

一方、共産党支持者らしく、データを重視する人でもあります。私の知らないデータを時々出されるので、井上伸さんの記事はよく見ます。

ただですね、残念なことに、先に書いたように強い弱者への共感と資本主義への反感をお持ちのため、データの解釈がかなり不安定です。明らかに間違っているのが20%以上あるように思います。

そんな井上伸さんが大阪都構想の結果をシルバーデモクラシーと関連付けることに反対しています。そのことについて山本一郎さんと議論のようなものになっています。


老人の投票権剥奪し老人の老人による老人のための政治なくせという辛坊治郎氏や池田信夫氏らの大ウソ
http://bylines.news.yahoo.co.jp/inoueshin/20150525-00046027/


シルバーデモクラシー」問題における井上伸さん辛坊治郎さんや池田信夫さんの謎議論
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20150527-00046090/


山本一郎さんの謎議論 - 「世代間格差の是正」でなく全世代での「富裕層と貧困層格差是正」が必要です
http://bylines.news.yahoo.co.jp/inoueshin/20150528-00046119/


最初と下のリンクが井上伸さんの記事、中のリンクが山本さんの記事です。

最初のリンクで井上さんは、65歳以上での相対貧困率が19.4%と高く、弱者なのだと主張します。

これに対して、山本さんは、資産を持っている人でも単年度収入が少なければ貧困に分類されてしまうので、相対貧困率では不十分で、資産も考慮する必要があるよね、実際65歳以上の平均資産は40歳未満よりも格段に高いんだし、と指摘します。

これに対して井上さんは、下のリンクの記事で、60歳代の単身世帯で貯蓄がない人の率が30%であり、資産で見ても問題だよと主張します。その記事から引用します。

そうすると高齢層は相対的貧困率は5人に1人と最も高い上に、貯蓄ゼロも3割となりますから大変な事態が起こります。

えーっとですね、まず「60歳代の単身世帯」という限定条件はどこに消えたのでしょうか?

65歳以上の単身世帯率は2012年の時点で23.3%です。60歳代ではもっと低いでしょうが、仮に24%だとすると、24%×0.3=7%の60代の人の話がいつの間にか高齢者全体の話に摩り替わっています。

で、そんなすり替えを行いつつ、結論としては、『「世代間格差の是正」ではなくて、「富裕層と貧困層格差是正」が必要なのです。』ということに。


いや、だから山本さんの指摘は、相対貧困率19.4%に含まれる高齢者の中に結構な比率で富裕層がいるでしょということなんですが、そこんとこは無視ですか?

でもって、山本さんは、格差是正といってもこういうタイプの富裕層から本当の貧困層への資産移転もしくは所得移転はとっても難しいねという重要な指摘もしているんですが、それも無視です。

井上さんの議論の仕方には結構ポイント外しな部分があって、いつも残念に思っています。というのも、資産まで考慮した本当の高齢者貧困率のデータを出してくれるんじゃないかという期待があるからです。そのぐらいの力はありそうに思うぐらい、いろいろなデータをお持ちなので。

いや、残念です。

で、この記事の結論は、データはいっぱい持っていて貴重なものを提示してくださるんですけど、井上さんのデータ解釈は間違っている、もしくはポイントを外している、そういう場合が少なくないですよという注意喚起です。

他にも事例を挙げたほうがよいのでしょうが、今日はここまで。