外れ値（西成，天王寺，浪速，中央区）について

先に示したように，西成区，天王寺区，浪速区，中央区を外れ値として扱うと，大阪都構想住民投票における反対票は日本人生産世代率に非常に高い相関を示す．実際の反対率は相関関係から予測される数値より，西成区は小さくなり，その他の区は大きくなっている．

西成区は，高齢化率，生活保護率，男女比など主要な社会的指標の多くが他の区から大きく異なっている．また，予測値よりも反対率が小さいのは賛成率の高い男性が多いことが影響していることが一因であろう．このように明確に他の区と異なることと，外れ値となった理由が十分に推定できるため，外れ値として扱うことに問題はない．

天王寺区と浪速区が外れ値となっているのは，地理的な要因が関係していると思われる．都構想の新区割りでは両区は西成区と一緒になることになっているが，西成区の貧困地区であるあいりん地区（と飛田）が両区との境界付近にあり，一緒の区になることを嫌ったことが影響していると思われる．実際，そのような調査結果があるらしい．

ちなみに，浪速区は投票率が他の区よりも格段に低い．大阪市平均よりも14％，2番目に低い西成区よりも8％も低い．また，この両区は日本人の生産年齢人口における男女比という観点で特異的である．浪速区は男女比が1.15と男性が多い．西成区に次ぐ二番目であり，他に1.1を超える区はないので，特異的である．また，天王寺区は0.89と女性比率が一番高い．二番目に女性比率が高い西区は0.93なので格段に離れているわけではないが，それでもやや特異的である．

中央区については良く分からない．中央区は浪速区，天王寺区，西区などと接しており，大阪府の官庁街であり，大阪城も存在している．社会的指標でいえば，高齢化率と子供率の両方で相対的に低く，生産世代率が全区の中で一番高い．生活保護率も低い．平均年収は中位である．生産世代率が高いという点では浪速区と共通しているが，同じように生産世代率が高い西区や北区は外れ値となっていない．

以上のように，西成区は完全に特異的であり外れ値として扱うことは当然である．天王寺区，浪速区については，西成区と一緒になることを嫌ったために投票行動が他と異なったという推測が立つ．中央区についてはわからない．