「奨学金について調べてみた」へのコメント

奨学金について調べてみた」という方(fshin2000さん)がいます。

http://f-shin.net/fsgarage/1019

反応を見てみました。


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https://twitter.com/search?q=http%3A%2F%2Ff-shin.net%2Ffsgarage%2F1019
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http://b.hatena.ne.jp/entry/f-shin.net/fsgarage/1019


いろいろですが、やや奨学金批判のほうが強いようです。


私は、fshin2000さんの元記事にある、


>大学に行った結果のROIが見合わないから奨学金が悪いというのは筋違いのような気がする。


というお考えに賛成です。
ですが、調べ方が不十分なように思いましたので、少しコメントします。記事には、


>市中の金利よりは安い(年利3%程度)


とありますが、二重の意味で間違っています。まず、市中の教育ローンで3%以下のものはあります。
また、そもそも3%は上限です。実際には、第二種の充実が始まった1990年代後半以降、3%近くになったことはないし、2%を超えたこともありません。1.5%を超えたこともほとんどないはずで、ほぼ1%未満だったと思います。したがって、利息分はそれほど大きくなく、返済額のほとんどは元金です。
データを見つけるのが少し面倒だと思いますが、興味をお持ちになった方はお調べあれ。

それから、種別・学歴別で未返還率のデータが出ています。それも興味深いと思います。こちらも是非調べてみてください。
結論を言えば、学歴が高いほど返還率が高く、成績のよい学生が受けられる第一種の方が、第二種よりも返還率が高くなっています。fshin2000さんの表現を借りればROIがよいということですかね。


私の考えでは、返済できない人が増えているのは、単純に奨学金を受ける人が増え、しかも相対的に成績が低い人も受けられるようになったからであり、要は第二種の人数を増やした=奨学生を増やしたことに伴う自然な現象です。しかも返済困難者はごく少数ですから、制度を問題にしなくてもよく、変える必要性は非常に低いと思っています。制度は現状のまま、返せなくなった人は自己破産して、支援機構は損金にすればよいと思っています。


ついでに言及しますが、奨学貸付金の返済率は、学歴が低いほど悪く、また第一種より第二種の方が悪いので、最も問題となるのは、第二種の高校での奨学金と言うことになります。ところが、高校の奨学金は学生支援機構が行っておらず、各都道府県の管轄となっています。このことは、未返済分の回収を困難にすると思いますし、そもそもデータのとりまとめも難しくなります。高校の奨学金も国レベルで取り扱うべきだと思います。日本育英会の頃は高校も扱っていたと思ったのですが、いつ変わったのでしょうか? また、理由は何なのでしょうか? 不思議です。


【追記】
遅ればせながら、元記事にあるYouTubeを見ました。
http://www.youtube.com/watch?v=3TelRs_tZTc


感想ですが、

  • 利率3%で返済総額を計算しているのは実態と大きく異なる。
  • コメントは、制度批判派と自己責任派の両極端。
  • 給付型の創設を主張している人がいるが賛成できない。


です。
給付型への反対理由ですが、2点あります。まず、給付型を創設しても、成績優良者しか受けられません。現在の制度でいえば第一種を受けている人の中のさらに上位の人ということになります。そういう人はもともと返済可能な人が多いはずです。また、返済困難者は第二種に多いはずですが、そういう人はおそらく給付型は受けられません。したがって、給付型の創設は意味がありません。
また、給付型を創設すると奨学金(ローン)の利用人数が減ります。すなわち、現在第二種を有効に利用しているような人が奨学金を受けられなくなることを意味します。そのことにも反対です。


【追々記】
BLOGOSにも記事が載っていたのですね。
http://blogos.com/article/77720/
そこの意見を見ると、データを踏まえずに、反射的に意見を書いている人が多いようです。奨学金問題を考える際には,少なくとも、利率が低いこと、未返済が多いのは第二種が増えた所為であることを踏まえていただきたいと思います。