憲法と内閣のお仕事

毎日新聞の記事です

『特集ワイド:続報真相 集団的自衛権行使で犠牲は? なぜ解釈の変更でいいのか? 核心答えぬ「安倍語」』
http://mainichi.jp/shimen/news/20140711dde012010010000c.html

安倍首相は説明不足であるという批判記事ですが、その中に次のような識者コメントがありました。

「私だったら、集団的自衛権による武力行使憲法違反ではないか、と質問しますね」。そう語るのは首都大学東京の木村草太准教授(憲法学)だ。「内閣の事務を定めた憲法73条には、一般行政事務に加え、外交や条約締結はあるが、集団的自衛権が行使された場合の対外軍事活動はどこにも書かれていません」
(中略)
「それよりも『73条に反し違憲ではないか』と具体的に問えば、首相は困ると思いますよ」

常々疑問に思っていたことを思い出しました。
73条を引用します。

第七十三条[1] 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五 予算を作成して国会に提出すること。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 大赦、特赦、減刑刑の執行の免除及び復権を決定すること。

引用して久しぶりに読みましたが、改めて思います。変えなきゃならんところがいっぱいある憲法だなあと。せめて、旧仮名遣いと7条の「総選挙」の誤字ぐらいは、とっとと変えろよ、国会議員仕事しろよと。

7条の「総選挙」ですが、参議院は半数改選ですから、これは衆議院に限った話です。ですので、誤字です。また、この「総選挙」が誤字ではなく衆議院だけを対象としていることにすると「国会議員」の方が誤字となります。
で、この問題に対してどう対応しているかというと、「総選挙」の言葉には、参議院通常選挙も含まれるという、なんとも無理やりな解釈をして誤字ではないような振りをしています。これが許されるんだから、集団自衛権憲法解釈ぐらい変えたって、護憲だの違憲だの立憲主義にもとるだのという問題にはならないと思います。だって、九条には、集団自衛権も個別自衛権も書かれていないんですから、書かれていないことを変えても憲法違反になんかなりようがありません。。。と、自衛隊違憲自衛隊は必要、自衛隊を9条に明記せよ派の私はそう思います。

さて、余談が過ぎたので、本題に戻ります。

記事において、首都大学東京の木村草太准教授(憲法学)は73条に「集団的自衛権が行使された場合の対外軍事活動」が書かれていないので、政府が行うことは許されないという「解釈」をコメントしています。しかし、それをいうなら、「個別自衛権が行使された場合の軍事活動」も記載されていませんので、これも許されないことになります。ということは、、、自衛隊、無意味。だったら、自衛隊は9条に違反しているというだけで、済む話のような。。。

また、余談に入ってしまいました。えーっとですね、本題は、内閣は73条に記載されている事項以外にもいろいろおこなってるんじゃないの、だとしたらこの反論の仕方って無意味なんじゃないの、という話です。なんでそう思ったかというと、常々内閣提出による立法というのを疑問に思っていたからです。憲法には、国会が唯一の立法機関だと明記されています。だとすると、内閣が国会に法案を提出するという行為は、いったいどう考えればいいんだろうかと疑問を感じていたわけです。私には、法案の整合性を保つためのチェックや修正案の作成程度は一般事務の範囲と思われますが、法案作成と法案提出は一般事務の範囲ではないと思われます。もちろん、首相をはじめ、大臣は国会議員が大多数ですから、国会議員としての仕事だということもできるでしょうが、非国会議員もいますし、少なくとも内閣の仕事として遂行しており国会議員の仕事として遂行していないわけで、なんだか腑に落ちません。ついでに言うと、議員立法という言葉があること自体、41条と矛盾しているんじゃないのと思います。