ファクトチェックも信用できない 年金積立金の運用益は10倍で正しい

参院選に伴って、ファクトチェックが流行っておりますが、ファクトチェックのファクトチェックが必要な状態です。なんなんでしょう。

 

いろいろな新聞もいろいろチェック記事を出してますが、解釈の余地があるものに対して、強引に間違いとか不正確というレッテルを張っています。同じ基準で自分の記事をファクトチェックしたらメタぼろでしょう。東京新聞なんか、ファクトとはいいがたい明らかに主観的な表現に対して、強引かつ独善的な基準でファクトチェックするという、ファクトチェックの意味を分かっていないことを露呈する記事をバンバン掲載している有様だったりします。

 

さて、そんな社会風潮の中、ファクトチェックイニシアチブというNPOができているようです。各会員ができるだけ厳密にファクトチェックし、それを掲載しようとするもので評価できます。

ただ、それでも不十分なものが出てきます。

私が見つけたのは、次のものです(会員サイトであるニュースのタネの元記事へのリンク)。

[参院選FactCheck] 年金積立運用益 民主党政権の「10倍」は不正確 | 調査報道NPO「ニュースのタネ」

 

自民党の主張「年金積立金運用益が民主党政権時代の10倍になった」という言説をチェックしたものです。

結論を言えば、2012年10~12月の期間の運用益約9兆円を民主党政権時代に含めれば上記の言説は間違いになり、自民党政権時代に含めれば上記言説は正しいものになります。

さて、当該記事の執筆者である楊井人文氏はどう判断したかというと、自民党政権になったのは2012年12月26日でほとんど終わりなので、当該期間は民主党政権に含めるべきであり、この言説は間違いとしました。

 しかし、これは自民党の主張のほうが正しく、楊井氏は間違っています。

 

この運用益約9兆円ですが、そのほとんどは日本株の上昇によるものです。また、その上昇が生じたのは11月に野田政権から安倍政権に交代することが決まった日からです。すなわち、金融緩和政策を掲げていた安倍政権への交代が決まった瞬間から、株価が急上昇し、それがこの9兆円の運用益となっています。実際、その前の2012年9月まではほとんど運用益が出ていません。このように、この運用益は、政権交代が決まったことによるものですから野田政権時代に含めるのは間違っています。

ということから、このファクトチェックはフェイクニュースだというしかありません。

それにしても、当時、実際に政権交代したわけでもなく交代が決まっただけなのに株価が急上昇したことは、大きな驚きであり、トップに近い扱いのニュースになっていました。私でさえ覚えているのに、社会に関心の強い弁護士である楊井が覚えていないわけはないと思いますが、どうしてこのような間違いをしたのか不思議です。