大阪都構想:生活保護

大阪市で行われた大阪都構想についての住民投票の結果を巡って、いろいろな言説が飛び交っている。


主な論点は、シルバーデモクラシー南北問題生活保護である。

これらの要因が、住民投票での否決に繋がったという論説に対して、強い反発が生じている。

特に生活保護と高齢者に関する辛坊治郎氏の発言への批判が非常に強い。
引用の引用で申し訳ないが、発言は

やっぱ高齢者の方で、生活保護受けてて、いまの大阪市のゆるい生活保護基準だから生活保護受けられるけれども、きめ細かい行政で行政単位が小さくなって生活保護受けられなくなっちゃあ困るとか。それからやっぱり大阪って長年、橋下徹が出るまで、市バスとか地下鉄、高齢者がタダだったやつを橋下徹が一部カネ払わなきゃいけなくなって、それだけでも腹立ってんのに、今後さらに市のタダのバス……若干払ってますけど、タダのバスとか地下鉄の切符を取り上げられたらたまんねー!っていう人たちが、もう圧倒的に反対派の方向に舵をきったというのが、結果ですね〜

http://lite-ra.com/2015/05/post-1115.html

というものらしい。確かに下品だし、事実に立脚していないように見えるので、批判が生じるのは当然であろうと思う。

下品・エビデンスベースでないという点以外にも、都構想が実現すると基準が変わって生活保護が受けられなくなるということも問題である。所管が変わったからといって、基準が変わるはずがなく、都構想によって基準が変わるという言説は間違いである。仮に正しいとするなら、都構想で福祉のレベルが下がるという批判が妥当だということになる。

なんというか、反対派にこういう根拠のない批判材料を与えるなんて、辛抱氏は、都構想賛成派にとっては、獅子身中の虫だったのではなかろうか?


おそらく辛抱氏が言いたかったことは、「ゆるい」検査が「行政単位が小さくなって」「きめ細か」くなった結果、今まで見過ごされていた、基準不適合なのに支給されていた事例が少なくなるということであろう。しかし、上記発言にある表現ではこのように理解することは難しいし、そもそもそんな事例は過去の例を鑑みるとごく少数であり、大勢に影響を与えることはない。


まだ、生活保護の話を続けるが、大阪市生活保護受給率は5.5%ぐらいであり、全国平均の1.7%よりもはるかに高い。とはいえ、5.5%なので、生活保護受給者が結果に強い影響を与えられるはずがない。その証拠といってよいと思うが、反対票との相関はかなり弱い(R2値で0.4を超えない)。

一方、大阪府就学援助率は26.7%と、全国平均の15.6%よりもはるかに高い。これは、生活保護の手前で頑張っている家庭が相当数あることを意味している。これらは大阪府の数字であるが、大阪市に限定すればさらに高まるであろう。

このような大阪市の固有の事情を鑑みれば、反対派の、福祉レベルが下がるという宣伝は結構効果があったかもしれない。まして、獅子身中の虫がいるのであれば。


辛抱氏の発言には、敬老パスを受け取っている高齢者への揶揄も含まれている。

実は、この揶揄が当たっているような気がするのである。それについてはまた後日。