大阪都構想:生産世代率が影響していた
大阪都構想に関する先の分析記事には実は心残りがありました。なので、もう少し分析を重ねたところ,よい説明変数が見つかったので、報告するものです。
まずは、結論を先に述べます。
以下、報告内容です。
まずは,結果のグラフを示す.
先の分析で心残りであったのは,高齢化率が大阪市の各区の全住民に対するものであったことである.全住民なので,外国人も未成人も含まれている.
そこで,外国人と未成人を除き,有権者に限定して高齢率を計算した.基にしたのは大阪市ホームページにある平成26年9月末日現在の住民基本台帳人口・外国人登録人口である.
その有権者高齢率と反対率をグラフ化したのが最初の図である.西成区を外れ値として除去して計算した近似直線も付加してある.R2値は0.67となった.住民全体での高齢率に対するR2値は0.63だったので,より相関が強くなった.
西成区が明白な外れ値であること,天王寺区も外れ値であろうこと,西淀川区と北区も外れ値とまではいえないもののそれっぽいことについては,住民全体での高齢率と同じであった.
実は,上記の分析をする前に,異なる説明変数を試みていた.日本人住民内での生産世代率である.すなわち,全住民数から外国人住民数を除いた後の日本人住民数に対する日本人生産世代人数の比率である.ここでの生産年齢は,20才から64才までとした.
この日本人生産世代率と反対率をグラフ化したものが下の図である.他のグラフと同じく,西成区を外れ値として除去して計算した近似直線も付加してある.R2値は0.70となり,相関の度合いが高まった(正確には逆相関).
日本人生産世代率に着目したのは,未成年者の比率が低い北区が近似直線から離れているのを吸収できるかもしれないと考えたからである.目論見どおり,北区は近似直線に近づいた.西淀川区も直線に近くなった.天王寺と西成区は相変わらず直線から遠いが,その遠さが小さくなっており,説明性の高さをあらわしている.
一方,新たに浪速区と中央区が外れ値っぽくなった.西成区に加えて,天王寺区,浪速区,中央区も外れ値として扱えば,よりR2値の高い近似直線ができる.もしかすると,R2値が0.8を超えるかもしれない.実際,これら4区以外はほぼ一直線に並んでいるといってよい.ただ,24区中の4区を外すのは多すぎるような感じがしたので,そこまではしなかった.
いろいろな数値を眺めたが.これら4区に共通するような社会的指標を見つけることはできなかった.
それぞれの区の大阪市の平均に対する特徴をまとめると,
- 天王寺区:有権者高齢率は低く,未成年率は高い(生産世代率は普通)
- 浪速区:有権者高齢率が低く,未成年率が一番低い(生産世代率が二番目に大きい)
- 中央区:有権者高齢率は二番目に低く,未成年率も三番目に低い(生産世代率が一番大きい)
となる.浪速区と中央区は似ているが,天王寺区は似ていない.天王寺区の外れ理由を西成区と一緒になるのがいやだったからとし,浪速区と中央区の理由を有権者高齢率と子供率が低いからだとするとなんとなく説明できるが,有権者高齢率と子供率が低いことがなぜ反対率の予測値よりも高いことに結びつくのか分からない.ちなみに浪速区は投票率において外れ値である.
西成区はいずれのグラフでも外れ値であり,相関から予測されるよりも反対率が大幅に低い.西成区は高齢率が他の区に比べて極端に高いことが特徴であるが,今回の分析でこの予測からの外れに関係のありそうな特徴が見つかった.
- 男性人口が女性人口よりも30%ほど高い.
出口調査の結果によれば,男性は女性よりも賛成率が高い.このことが,反対率が予測値よりも低いことを説明する要因のひとつであろう.