政治番組での議論はデータをふまえて行うべき

ウェークアップ亀井久興氏と竹中平蔵氏が出演し、郵政民営化について議論していました。まあ、予想通り議論は平行線のままで終わったわけですが、気になったのは亀井氏の議論の仕方です。


民営化は駄目だという主張を支えるものとして、個別の事例を挙げるだけでマクロなデータを一切示しませんでした。竹中氏の方は、何回か(不完全とはいえ)マクロデータに言及していましたから、その対照が気になりました。


一例を挙げると、郵便局の廃止についてです。亀井氏は民営化によって、郵便局が廃止され、ユニバーサルサービスが維持できないと主張しましたが、データは示しません。逆に竹中氏が、公社時代に比べて、郵便局の廃止数が減っていることを数字を挙げて言及した上、官営・民営にかかわらず廃止せざるを得ないものは廃止せざるを得ないし、その中で廃止数が減っているというのは、民営化後もユニバーサルサービス維持の努力がなされているからだと主張しました。それに対する亀井氏の反論は、「タイムスパンが短いから(参考にならない)」というものでした。


他の論点についても、亀井氏は個別のエピソードや他人の意見を紹介するだけでデータを示すことは全くありませんでした。データらしきものといえば、黒字が想定よりも低いということです。


正直、竹中氏の方に説得力があります。「タイムスパンが短い」というならば、黒字が想定よりも低いことについても、タイムスパンの短さと昨年からの経済状況の混乱とを考慮に入れるべきで、民営化が駄目という根拠にはなりにくい。一方、郵便局の廃止数が減っているというのは何らかの方針変更の影響ですから、郵政公社時代からの変化だけを見れば民営化にとってプラス材料であることは明かです。なので、亀井氏が論点としてあげたことは間違いです。あるいは論点の提示の仕方が間違っています(公社以前のデータを示せばまた別の議論の仕方が可能かもしれません)。*1


私は長らく、郵貯簡保廃止論者でした。貯蓄可能額が1000万円まで順次拡大されたことについても反対でした。これは、公的資金の拡大が将来の重大な禍根になると考えたからです。実際、民営化は、公的資金財政投融資)供給の段階的縮小と将来の廃止が最大の目的でした。


ですので、民営化の目的は理解しますし、あれほど巨大になった公的資金供給源を解体するのに、民営化は一つの方法であると思います。その意味では、民営化賛成派といっても良いですが、本来は郵貯簡保廃止論者ですので、本当に民営化以外に道はなかったのかと考えることもあります。


したがって、民営化反対論者の意見を興味を持って聞いているのですが、納得のいく議論を聞いたことがありません。データを示さないか、データを示したときも見当外れのものだったりするからです。

反対論者の方々、是非データをふまえて議論をしてください。また、マスコミは議論の場を提供するならば、基礎データを用意し、あらかじめ論者に提供しておいてください。でないと、全く益のない、空虚なすれ違いの議論が乱発されるだけです。

追記

亀井氏は同番組で、国民新党他が西山社長を刑事告発し、それが受理されたのは西川社長の不正が認められたからだというようなことを言っていました。刑事告発は、書類が整っていれば受理されるものですから、受理されたことと不正の有無とは全く関係ありません。このあたりの言説からも、亀井氏はなんかずれてると思います。

*1:竹中氏に必ずしも賛同しているわけではありません。竹中氏のデータの示し方も恣意的ではないかと疑っています。ここでは亀井氏の論点の提示の仕方が拙劣だと言っているだけです。