JANJANにおける劣化ウランに関する記事の間違い
JANJANに田口汎氏による劣化ウランに関する記事が2本掲載されています。ローレン・モレ氏からのメールの抄訳だそうですが、田口氏による前説明と注釈が付け加えられています。これに関して、間違いらしきものを見つけたのでここに指摘します。田口氏の記事は次のリンクからたどれます。
http://www.janjan.jp/world/0609/0609070806/1.php
http://www.janjan.jp/world/0609/0609100967/1.php
さて、こんな記事を取り上げてはいますが、私は現時点では、劣化ウランの放射線による健康被害については否定的なのです（化学毒性は認めています）。ただ、完全否定しているわけではなく、事実だとすると大きな問題なので関心はもっており、新聞記事などは読むようにしています。残念ながら、この記事はよくあるタイプのものであり、私の見解を覆すものではありませんでした。むしろ、ローレン・モレ氏と田口氏の科学的素養の不十分さがあちこちに散見されて、見解が補強されたぐらい。
さてさて、全体的には賛同もできなかったのですが、二点だけ気になりました。一つは、原爆による放射線被曝によって糖尿病が増加したという記述で、もう一つは2番目の記事の図（９）の説明の間違いもしくは不明確さです。本当は他にも間違いらしき箇所が複数あるのですが、この図の説明はもっとも気になりました。
というわけでこれらが気になったのですが、前者はかなり難しそうなので、ゆっくり調べようと思います。本日は後者を取り上げます。
田口氏の2番目の記事には図9が次のように説明されています。
急激に吸入（inhale)された高温劣化ウラン粒子によって生起した肺ガン顕微鏡写真
（Energy Research Foundation提供写真）
検索してみると、図9の元の写真は次のページにありました。
http://www.mindfully.org/Nucs/Hot-Particle-Lung-Tissue1997.htm
元のページから英語の説明を引用します。
“Hot” or radioactive particle in lung tissue”
Plutonium in Lung Tissue: The dark, star-like image in this photograph (magnified 500 times) shows tracks from alpha particles radiating front a speck of plutonium lodged in the lung tissue of an ape. Alpha radiation from plutonium and other alpha-emitting radionuclides can be blocked by skin or even a piece of paper but it is the most biologically destructive form of ionizing radiation when the alpha-emitting substance is deposited in the soft tissue of internal organs like the lung. The alpha tracks shown above were captured over a two-day period.
JANJAN記事では、「高温劣化ウラン粒子によって生起した肺ガン顕微鏡写真」となっていますが、英語では違いますね。英語では、タイトルが「肺組織中の高温（すなわち放射性）粒子」であり、粒子の正体はプルトニウムであり、しかも写真は単なるアルファ線の飛跡と説明されています。もちろん、アルファ線が生体組織をもっとも破壊しやすいイオン化放射線だとは記述されていますが、「劣化ウラン」も「肺ガン」もどこにも書いてありません。
したがって、この日本語の説明は間違いであり、しかも自分の主張に沿う方向での間違いですから、意図的と勘ぐられても仕方のないものです。
もともとローレン・モレ氏の記述が間違っていたのか、抄訳の過程で田口氏が間違ったのか、どちらなのかはわかりませんが、いずれにせよ早急に修正する必要があるでしょう。
私はJANJANに登録していないので、コメントがつけられません。なので、このエントリは、田口氏のブログにトラックバックしようと思います。が、成功するかどうか、不安です。以前もトラックバックに失敗したしなあ。
追記：トラックバックしたのは次のエントリです。
http://brahma.zushi.org/index.php?/archives/897-acecac1.html
